ジャニーズ事務所によるファンダム指揮は取返せない損失を生む。二番煎じでは勝てず、勝負する利点もない

※この記事の文字量は14分相当です。
※この記事は後編となり、前編の記事が別にあります。
お急ぎの方は、本題が書かれた後編(ここから下)から読むことをお勧めします。

アイドルが許容できるファンダムの範囲

アイドルは、「ファンダムにより発生しえる様々な悪影響をどこまで許容できるか」ということを考えていきましょう。
分かりやすい一例としては、「どの程度のファンの自己犠牲を許容できるか」があります。

  • CDを1枚多く買うため、実生活での友人と遊ぶのを1回我慢した。
  • CDを10枚多く買うため、実生活での友人と遊ぶのを完全にやめた。
  • ファンダム活動に時間と体力を少し使い、大学受験や転職活動が少しおろそかになった。
  • ファンダム活動に時間と体力をかなり使い、大学受験や転職活動を諦めた。
  • ファンダム活動に少し夢中になり、家族や子供との交流や世話が少しだけ減った。
  • ファンダム活動にかなり夢中になり、家族や子供との交流や世話をほとんどしなくなった。
  • 「ただ純粋に歌って踊っているのを見て楽しむ」という感覚を、忘れるタイミングがまれに出た。
  • 「ただ純粋に歌って踊っているのを見て楽しむ」という感覚を、まったく味わえないようになった。

どの程度のことを推しのアイドルが許容しているのか、アイドルの意思を把握できているのであれば、その意思を叶えるという面において、ファンダムによる「アイドルのために」は成立します。
(上記の家族への大きな悪影響などの責務を生じるものは、自由の範囲を逸脱します。)

ファンダムが与えるアイドルへの精神的負担

しかし、多くのアイドルは、ファンの自己犠牲などのファンダムにおける悪い影響は望んでいません。
例えば、上記のうちの大きな悪影響が出た理由が「アイドルである自分のため」であると知ったアイドルは、多くの場合、不快感を受け、強いストレスを感じます。

アイドルが、所属事務所側から「過剰なファンダムの扇動をしなければならない雰囲気」のプレッシャーを掛けられたとしても、
アイドルは自らの意思の発言として、ファンたちに「努力」をするように、発信しなくてはいけません。

前編の記事に記載したとおり、2021年現在まで、海外アイドルグループの出身国は、ファンダム文化の中心地となっていますが、アイドルの自殺率が非常に高くなっています。
その悲劇に、上記のアイドルが受ける強いストレスが影響していることは、容易に想像されます。
ファンダム文化が流行り始めている日本において、こういった悪い側面がどの程度理解されているのかは、とても重要なことです。

ファンダムは金儲けに利用されて維持される

問題を複雑化させているのは、アイドルもファンダムも、商業を基盤として成り立っているというところです。
もし、「ファンダムはお金になる」と企業が判断した場合、企業はファンダムをお金儲けの道具として利用するでしょう。
資本主義として、そのこと自体は間違っていないと思いますが、事実を隠蔽したり、偽ったり、捻じ曲げて伝えたりすることは、道義に反しています。

例えば、芸能事務所が「強いファンダムを造り、ファンダムから直接的もしくは間接的に、お金を入手したい。」ということだけを考えた場合、
所属アイドルには、「ファンダムを多くするように、ファンダム活動を活発にさせるように、誘導しろ。」とプレッシャーを掛けるでしょう。

企業もファンダム個人もファンダムを強要してはいけない

多くの場合、アイドルと事務所の力関係は、事務所の方が圧倒的に有利なため、アイドルの本懐とはかけ離れていたとしても、アイドルは事務所の意向に従うことになります。
仮に、公の場でアイドルが「ファンダムをどう思いますか?」と聞かれても、
「ファンダムには感謝しています。これからもファンダム活動を一緒にしましょう。」と言うでしょう。
実際は、アイドルの活躍の場が拡大すればするほど、所属事務所以外にも、様々なスポンサー企業も関係してきて、波風を立てることに恐怖を覚えることも多いでしょう。

アイドルは本当はファンダムをどう思っているのか、
仮にファンダムを肯定する考えだった場合でも、それによる悪影響をどの程度許容しているのか、
その本心は、ファンの立場では知ることはできないのです。

前編の記事に記載したように、ファンにとってのファン活動をする目的が、「自分のため」から「アイドルメンバーのため」にすり替わってしまうことは起こりやすいです。
芸能事務所やその関係企業が、人気アイドルの言動や、人気アイドル本人の顔をチラつかせて、「ファンダムはアイドルたちのためになる」と誘導すれば、自己犠牲を良しとするまでのファンたちを量産し、強力なファンダムを作ることは容易いはずです。

しかし、仮にアイドル本人が軽度のファンダムを肯定する姿勢を持っていて、それを事務所が汲んでプロデュースの仕方に組み入れたとしても、
ファンの立場では、そのアイドルの意思の信ぴょう性を確認する術を持ちえません。

また、ファンダム活動に自己犠牲が強く関係するのであれば、ファンダムの主役は一人ひとりのファンであるべきで、その中の各種目標は、ファンが主体的に自律的に決め、主体的に行動すべきです。(違法行為の規制を目的とする場合は除く。)

以上のことから、ジャニーズ事務所にせよ、他の芸能事務所にせよ、ファンダムの指揮を企業がとることは、避けるべきであると私は思います。
このことは同時に、「ファンダムであるファンが、ファンダムでないファンに、ファンのあるべき姿として、ファンダム的な応援をしないことを責める」ということも避けるべきとなります。

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ファンダム産業はやがて衰退する

ファンダムは、2017年から2021年現在までに、世界的に強い影響力を持ちましたが、今後も同様に影響力を持ち続けるかどうかということを、考えなくてはいけません。

ファンダムは、最近流行っている「消費者参加型産業」であり、
成長したファンダムは、最も大規模化した消費者参加型産業であると言えます。

しかし、人気指標を基盤とする消費者参加型産業の大規模化は、自滅の要素を持っています。

前編の記事に記載したように、要因は、大衆人気指標における公信性の減退です。

すでに世界では人気指標の信頼性への疑問視が始まっている

当然、Twitter上でのトレンド採用や、ビルボードチャート上位取得を優先したツイートが、Twitter上で溢れれば、他のTwitterの利用者(個人ユーザや企業)は、その「トレンドやラインキングに信ぴょう性はない」と思うように、徐々になってくるでしょう。(同時に、一般者によるTwitter検索も、大きく利便性を失います。)
CDやブルーレイの売り上げ枚数も、「大衆の人気や知名度を反映した結果」ではなく、「コアなファンがどれだけお金を積んでいるかの結果」を示すだけとなります。
多くの大衆は、自分とは縁遠い界隈での事象に興味は持ちませんし、それを察知した指標を利用する側の企業(指標を作る側ではない)は、そのような指標は当てにしなくなります。

実際に2018年以降は、「ファンダムによるビルボードチャートにおける大衆人気指標としての公信性の欠如」が、アメリカで問題視されるようになりました。

SNSのプラットフォーマーは、高い経費を掛けて開発したプラットフォームがそのような利便性と信頼性を失うこととならないように、
継続的に公共性と利益を出せるように、企業努力をしています。
Twitter社などは、自然発生的とは判断しづらいツイートやアカウントはシャドウバンとするなど規制を設けているのも、その一環となります。(「キンプリファン妻の夫」のツイッターアカウントのように、不適当にバンされるという事象も発生することはありますが。)

そろそろファンダム産業は成長期から衰退期にシフトする

2017年ぐらいまでの「ファンダム活動の結果」は、「大衆人気の現れ」として、一般人や業界内で、認知されたと思われます。
やがてすぐに、大衆人気指標を扱う業界で、それが「大衆人気の現れ」ではないと判断されますが、
その実情を理解している範囲は限定的に留まります。
しかし、数年も経たないうちに、実情は、大衆や関連企業にも知られ始め、「大衆が事実を完全に知った」と判断される直前に、多くの関連企業はファンダム産業から手を引くことになるでしょう。
場合によっては、TwitterなどのSNSプラットフォーマーや、ビルボードチャートなどの大衆人気指標が、ファンダムによる影響を排除することに成功するかもしれませんが、
どちらにせよ、ファンダムは、それまで持ち得ていたファン界隈やファン産業の外部への強力な影響力を、それほどの年数を絶たずして、失うこととなります。

ファンダム産業衰退は少し遅れて日本に来る

ビルボードの中心はアメリカで、まずはアメリカを中心にその流れは起こります。
ファンダムの発生、ファンダムの影響、その実情の理解は、日本においても同様に起こりますが、
ファンダムの発生が世界よりも後であるのと、日本にはオリコンという国内の大衆人気指標を扱う有力企業があるため、日本国内でのその後の事象の発生は、アメリカでのそれよりも遅延することになります。

しかし、日本の市民や企業は海外から情報を得る手段は持っていることと、多くのプラットフォームは世界標準のものを使用しているため、
日本での事象の一連の流れは、アメリカで起こった流れよりも素早く、短い期間でファンダム産業は衰退することになるでしょう。
当然ですが、アメリカで既にファンダム産業が衰退している状態では、日本発信のファンダム活動による世界進出は、ほぼ不可能となります。

ファンダムという魔法。使い手は企業

この強力な魔法は、大量の魔力を消費しますが、誰でも唱えることができます。
最初は強い威力を発揮しますが、誰かが魔法を唱える度に、消耗する魔力は増えるのに、威力は減ります。
その威力の強さを知った人々は、その魔法を使いたがりますが、最初に唱えられた後は、誰が唱えようと、合計で唱えられた回数がさほど多くならないうちに、その威力は激減します。
この魔法は、違う戦場で唱えると、少し威力は復元しますが、また誰かが唱えると、より早く威力が減ります。

時代の変化が激しい昨今では、このような事象が様々なところで発生し、今後はより激しくなるでしょう。
ファンダムは、比較的に分かりやすい例になるのではないかと思われます。
なお、魔法はファンダムで、魔法を使うのは、ファンダムを利用し、利益を得る企業です。

人の心の仕組みを巧みに利用した魔法Aの使い手は、たとえその魔法を使えなくなっても、それ以上に失うものはありません。
ただ単に、それ以上に魔法Aが使えないだけで、既に魔法Aによって得た膨大な利益は残ります。
その使い手が狡猾な者なら、その後、魔法Aの後片付けはせず、既に、か細くなったその魔法のスイッチをONにしたまま、放置するでしょう。
そして、使い手は自らの名前を別なものに変えて、新しい魔法Bを作ろうとします。

一度ファンダムを受け入れると元に戻らない

ファンダムに浸かったアイドルグループないしアイドルブランドは、産業としての力が減退しても、ファンダムとしての機能は、残留し続けることなる可能性が高いです。

一度ファンダムをファンの姿勢の根幹としてしまったアイドルグループないしアイドルブランドには、ライト層のファンが寄り付かなくなります。
その理由には、
「ファンダムのファンとしての敷居高さ」と、
「ファンダムからの資金貢献を当てにせざるを得なくなったアイドルの姿勢に、ライト層のファンが嫌気をさす」からと、
「一度ついたアイドルとファンのイメージは、なかなか払拭できない」などがあります。

ファンダムとしての市場効果がある程度衰えたとしても、すでにファンダムに浸かったアイドルにおいては、ファンダムの維持が最も利益を生む選択となり、芸能事務所や関係企業は、ファンダムを維持するように働き掛けるでしょう。

元々、ファンダム構造からスタートとしたアイドルであれば、以後の世界進出などの規模拡大の将来性は低くはなりますが、アイドルの売り出され方やアイドルに感じる魅力の性質は、アイドルの年齢に関するもの以外は、基本的には大きく変化しません。

しかし、ファンダムに浸かる前には、「ファンダムに浸かると失われる魅力」を発揮していたアイドルは、その後、二度とその魅力を取り戻すことはできません。

ジャニーズ事務所のアイドルは、SMAPや嵐を筆頭に、「国民的アイドル」というイメージを有する「ジャニーズブランド」を得ることに成功していました。
この「国民的アイドル」は、「大衆から持たれる親近感」という要素により成立しています。

このブランド力は、ジャニー喜多川をはじめ、多くの芸術家やマネージメントをする人間、そしてアイドル本人らの才能と長期間の努力の上に成り立っています。
ジャニー喜多川が亡くなって以降、多少そのブランド力に影が出始めてはいるものの、いまだその力は衰えてはいません。
しかし、ファンダムは、「大衆から持たれる親近感」を破壊する要素を含んでいるため、これまで培ったジャニーズブランドの魅力の根幹を失わせます。

ジャニーズがファンダムを取り入れるのは失策

商業的な側面で言った場合でも、2021年7月現在なら、ファンダム構造を取り入れなくても、ジャニーズ事務所や関連企業は、十分な収益の維持や成長は容易いはずです。

敢えて、現時点でのジャニーズが、「世界で成功したファンダム構造アイドルの後に続け」と、ファンダム構造を積極的に取り入れるのは、失策としか言えないと思われます。

もし、ジャニーズ事務所がファンダムの取入れを許容した場合、数年のうちに、ほとんどのジャニーズアイドルとそのファンは、多くのものを失うことになると予想されます。

一部の人間にはファンダムはオイシイ?

そんな中、敢えてファンダムを取り入れることにメリットを得られる人もいる可能性があります。
例えば、ジャニーズ事務所内の幹部や、ジャニーズ事務所の内部への取入りを目指す人間です。

ジャニー喜多川が亡くなったことを皮切りに、事務所内の内部統治が不安定となり、それ以降のジャニーズ事務所内の権力争いは、いまだに続いている可能性もあります。
彼らは、手っ取り早く企業利益を出すことにより、自らの業界におけるポジションを強くしたいと思っています。
もちろん、ポジションを取ることが目的のため、ポジションをすでにとることができたなら、その後に徐々にその成果が衰退していったとしても、彼らにとっては問題ありません。

ファンダムは、非常に利用価値の高い道具と見なされる可能性があります。

最後に

私がジャニーズ事務所がファンダムを指揮するのに反対な理由は、以上となります。

一般のファンが、旧来型のファンのやり方を継続するのか、ファンダムとなるのかは、基本的には自由だと思います。
ファンダムと一言で言っても、そのやり方には、様々あるでしょう。

ただし、ファンダム活動をする場合や、「応援」という言葉を使用したり、「アイドルのために」ということを考えたりする場合は、この後編の記事と前編の記事に書かれていることは、一通り考えてみてほしいと、私は思っています。

何かを好きになったり、何かに一生懸命になったり、何かに「いいな」と感じたりすることは、とても素晴らしいことだと、私は思っています。

キンプリファン(ティアラ)、crown垢などを含め、
ファンがファン活動をするにあたり、多くのファンが、自分に正直に、自分らしくいれることを、私は願っています。

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